時々テレビで声優のギャラがいくらといった内容を放送していることがあります。実際のところ声優の収入はどれくらいなのでしょうか。今回は声優事務所の仕組みと収入の関係についてご紹介していきます。
もくじ
声優の収入はギャラ
声優の収入は「ギャラ」で支払われます。「ギャランティ」(報酬)の略語です。声優は声優の仕事だけで食べていくのが大変と聞くと思います。ギャラは支払われるはずなのに、生活がなぜ苦しくなるのでしょうか。
声優は給料制じゃない
日本の会社では通常「給料制」です。会社に所属している限りは、契約の通り給料が支払われる仕組みになっています。英語で言うと「サラリー」ですね。サラリーマンという言葉もこの給料星から来ている言葉です。
大して声優は「報酬制」です。ギャランティ、つまり出来高制です。仕事を多く取っている声優さんであれば、ギャラもたくさんもらえます。しかし仕事をあまり取れない声優さんはギャラがもらえないのです。
「1回につき」のギャラ設定
アルバイトなどで時給1000円とかだと、1時間働けば1000円の給料が発生します。2時間働けば2000円ですね。しかし声優のギャラは、時間でのカウントではありません。1契約つまり「1回につき」のギャラ設定です。
収録に12時間かかることもありますが、それでも1回は一回です。 1時間で終わる収録はそうそうありませんが、3時間の収録でも、12時間かかっても1回につきのギャラが支払われます。
何役やっても同じギャラ
ドラゴンボールの野沢雅子さんがテレビでも言っていましたが、1回につきのギャラ設定のため、たとえ同じ作品の中で二役演じたとしてもギャラは変わりません。そのため、端役の声優さんを何役も出演させることも珍しくありません。
最近ではアンパンマンに出演している山寺宏一さんが、ジャムおじさんの声を担当することが決定しました。山寺宏一さんはアンパンマンの中では四役を演じることになります。それでも山寺さんのギャラは1回分ということなのです。
声優事務所の仕組み
声優のギャラ設定がどうなっているのかも気になるところではないでしょうか。声優事務所の中で新人声優のギャラの設定はおおよそ決まっています。ベテラン声優になってくると、マネージャーとの交渉やクライアントとの交渉で決定されます。
預かりは2種類
声優養成所で、合格し声優事務所に残る事になった人の立場を「預かり」と呼びます。正式に所属とはなっていません。預かりの種類には二つあります。
①期待の預かり
大手声優事務所であればほとんど期待の預かりでの所属です。およそ1年間、育成の意味も兼ねて、またその声優事務所の方針など理解してもらう意味でも補欠期間のような立場です。もちろんこの期間に良い結果が残せれば、すぐに声優として正式所属となることもあります。
②最後のチャンスの預かり
小さい規模の事務所は、所属している声優も少なく、マネージメント力が弱いのが欠点です。声優事務所側からすると、なるべく即戦力になる人を残したいのが本音です。またたくさんの仕事を取って来れる人は貴重な存在です。
そのため声優養成所から合格までは行っていないものの、最後のチャンスの預かりとして、補欠期間を設けているのです。この期間に自分で自分を売り込み、仕事を取ってくることができればその声優事務所に所属させるのです。
つまり自分で仕事を取ってくることができなければ、その声優養成所、声優事務所からは去ることになります。
ジュニア所属
預かりの期間を何かしらの仕事をしながら、さらに声優事務所のレッスンを受け、正式に所属することが決まると「ジュニア所属」となります。基本的にはジュニア所属になれば「声優」として認知されます。
①ジュニア所属は3年
日俳連という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 日本俳優連合の略称です。理事長を俳優の西田敏行さんが務めています。 テレビ局や制作者と対等に出演契約を結びにくい俳優の弱い立場を解消しようと結成された俳優のための組合です。
声優も日俳連に登録することになります。日俳連に登録をされるとジュニア所属となり、ギャラも一律で15000円となります。ただしギャラはそのまま支払われるわけではありません。声優事務所に2、3割くらい斡旋料として差し引かれます。そこからさらに所得税が引かれます。
実際に手元に残るギャラは一本あたり5000円前後です。ジュニア所属は3年という決まりがあります。この後もご紹介しますがランカー所属となりギャラの設定が変わってきます。
②昔はいた「渡りジュニア」
2012年くらいまでは、「渡りジュニア」と呼ばれる声優がいました。先程ご紹介したように日俳連に登録され、3年経つと自動的にランカー所属となります。ランカーになるとギャラ設定が変わってくるため、仕事が減ってしまう声優さんが多くなります。
そこでランカー所属にならないよう、他の声優事務所にうつって、さらに3年ジュニア所属として仕事をする声優さんがいました。3年ごとに他の声優事務所に移って仕事をするため、渡り鳥のようだということで渡りジュニアと呼ばれるようになりました。
しかし現在では渡りジュニアは声優の世界では禁止事項になっています。各声優事務所も所属年数をきちんと把握しています。新人声優に公平に仕事を行き渡らせるため、渡りジュニアを禁止したということです。
ランカー所属
ジュニア所属の期間、3年間が終わると自動的にランカー所属となります。声優事務所との契約内容が見直されることになります。ランカー所属になることでいいことばかりに目が行きがちですが、これまでの経歴で声優としての仕事の量などピンキリに分かれて行きます。
①仕事が激減することも
ジュニア所属までは一本15000円で請け負っていた仕事が、少しずつ高くなります。 A ランクまで上がると一本あたり45000円に跳ね上がります。本人の意思とは関係なく上がるためジュニア所属までで仕事が巡って来ていた人にも、仕事が激減してしまう可能性があります。
ジュニア所属までは「お試し価格」として起用されていた人も、それより高い金額では使いたくないと思われてしまうことがあります。ランカー所属になっても仕事が減らない人は、ジュニア所属時代にしっかりとコネクションを作り、実績を残してきた人ということです。
②ベテランは一本で140万円?
私の声優養成所の学院長であった勝田久さんは、テレビ CMの収録一本で140万円のギャラだったそうです。テレビ CM のしかもスポンサーが大きいところ、さらに超ベテランともなるとこのくらいのギャラは普通なんですね。
声優の収入はいくら?
声優の平均収入はいくらなのかという疑問が湧く方もいるでしょう。これまでご紹介してきたように声優のギャラは、立場や仕事の内容などによっても変わってきます。
均一でないので注意
「時給換算すると・・・」とよく計算されますが、そもそも声優のギャラは均一ではありません。収録時間も3時間くらいから12時間以上かかる場合もあるため時給換算はできません。
声優事務所の契約やマネージメントで変化する
声優事務所によっても契約内容が異なります。ほとんどの事務所がギャラのうち2割から3割を斡旋料として差し引きます。これは声優事務所に所属する時に契約を交わす時に、契約書内に書いてあることです。
また仕事の内容によってですが、ゲームのアプリなどだと「1ワード」いくらという設定になることもあります。この場合ゲームアプリ内でたくさんセリフを喋る人の方が多くギャラをもらえるということになります。
これまでご紹介してきたように声優の収入にはばらつきがあります。ベテラン声優だと140万円、新人声優だと15000円。ここまで差が開いているということを考えると、声優として生活できるようになるのはかなり厳しいことがわかります。
また最近ではテレビの視聴率が全体的に落ちて生きていることから、アニメにかけられる製作費が下がっていることもよく言われます。新人声優の場合、ギャラが安いので試しに使われることはあっても、ランカー所属になった途端に全く仕事がなくなってしまう人もいるのです。