声優になるのにどのようなトレーニングをしたらいいのかよく質問をいただきます。私はその質問に対して答えるのにとても困っています。そもそも「声優としてのトレーニング」とは、いかにも「声優です!」というトレーニングはありません。
もしかしたら他の声優さんはそういうトレーニングをしているのかもしれません。でも例えばかっこいいセリフを言うとか、変身シーンのセリフを言うとかは、私はしたことがありません。私が考える声優になるための毎日のトレーニングをご紹介します。
もくじ
声優になるための毎日のトレーニング
声優になるための毎日のトレーニングは、本当に地味です。声優養成所に通ったとしても、この基礎練習をある程度教わって、毎日毎日繰り返すだけです。それだけでも声優養成所に通い始めてから「なんかイメージが違う」と言って去っていく人を何人も見ました。
発声練習
発声練習は何となく派手なイメージがあると思います。住んでいる家の構造にもよりますが、本域の発声練習なんてできたもんじゃありません。大きな声を出すことは、ご近所にも迷惑になりますので、時間やタイミングを考えましょう。
発声練習をどうしても家でやりたいのなら、毛布をかけて音がもれにくい環境でやります。(冗談みたいですが、ホントの話です)
滑舌練習
あまり大きな声ではできませんが、滑舌練習は毎日家で行うことができます。 滑舌課題の本などは書店でも売っていますので、1冊だけ購入して練習すればOKです。もちろんネット上にある課題でもかまいません。
顔の筋肉を鍛える
人間気持ちと表情は連動しています。試しに怒った気持ちになってみましょう。そのまま笑顔になってみましょう。絶対無理ですね。
喜怒哀楽を表情にして、表情を素早く切り替えるトレーニングがおすすめです。また、300%くらいの笑顔を作って、3分キープします。これは最初は3分もたない人が多いのではないでしょうか。
顔の筋肉を鍛えることで滑舌にも良い効果があります。このトレーニングは毎日家の中でできます。トイレでもお風呂でもどこでもできるトレーニングですね。
全身を鍛える
やっていない人が多いのが全身を鍛えるトレーニングです。発声を良くするポイントの1つに、全身の筋肉をバランス良く使えることが挙げられます。声優は声を使って仕事をするので、顔や口周りの筋肉だけに意識が向いてしまい、全身を鍛えることを怠りがちになります。
腹筋や背筋などの筋トレは当然必要なトレーニングです。声優には体力も必要なので、ジョギングやスイミングなどの有酸素運動も取り入れましょう。
今まで紹介したトレーニングを毎日やるとなると、2時間くらいは必要です。全部のメニューを毎日こなすのは難しい場合もあるでしょう。そんなときは、1日おきに組み合わせを変えてトレーニングすると良いですよ。
セリフやナレーションのトレーニング
多くの声優志望者がトレーニングをするというとセリフやナレーションの練習=トレーニングだと思っています。しかし、自宅での大きな声での練習は難しいですよね。
でも安心してください。自宅で大声でトレーニングする必要はありません。なぜなら、声優にとっての重要なポイントは声を出すセリフの練習でないからです。
一定のスピードでただ読むトレーニング
次に、セリフも含めてト書き(セリフ以外の状況説明の文章のこと)など台本全部を音声にしてみます。ただ音声にするときに注意したいのが「感情は一切入れないこと」です。
これは、読み方のチェックや日本語の文章をしっかりと理解するための「素読み」と呼ばれる練習です。舞台の稽古でもよく使われるトレーニングです。
演技する前に「解釈」すること
台本を前にして、すぐに演技することはNGです。声優にとって声優の仕事の8割くらいは、台本を「解釈」することです。別の呼び方だと台本を「読み込む」ことですね。
これを勘違いしている人は多く、すぐにセリフを読もうとしてしまいます。すぐにセリフを読んでしまうとただのセリフの言い方の練習になってしまうのです。
私も声優養成所時代にはよく言われました。
「1に解釈、2に解釈、3、4がなくて、5に解釈」
つまり、解釈がほぼすべての声優の仕事だと言っているようなものなのです。
解釈し終わることはありません。実際に演技してみたときに「あれ?解釈違うかも」と演技プラン自体が変わることがあるのです。
表情だけ演じるトレーニング
自宅で練習するときには、必殺技の名前を叫ぶなんて練習はなかなかできません。大きな声での練習はカラオケボックスなどでするようにしましょう。
自宅で演技の練習として、表情だけ演じるトレーニングがおすすめです。その役になって、気持ちになって、表情で表現するトレーニングです。セリフを発する必要はありません。むしろセリフは発さないのが原則です。
無表情の演技もあると思いますが、その無表情の気持ちでいられればOKです。無表情の演技も含めて「表情がわからない」のなら、それは「解釈」ができていないので、再度台本の前後を読んで、しっかり解釈してください。
日常でできる声優のトレーニング
ここまでに基礎練習からセリフの練習まで含めて説明しましたが、声優のトレーニングは日常でもできます。私がよくやっていた日常のトレーニングをご紹介します。
朝鏡を見て表情トレーニング
朝起きたら、顔を洗ったり、歯を磨いたりする時間がありますね。その時間にちょこっとプラスして、表情トレーニングをしてみましょう。
- 満面の笑顔
- この世の終わりのような絶望の顔
- 憎しみを込めた怒りの顔
- 飛び上がるほどのうれしい顔
などなど。表情を素早く変えるのがポイントですよ。朝表情トレーニングをするだけで顔の血行が良くなり、目も覚めてきます。
電車の中でトレーニング
バタバタと出発して、電車に乗ってバイト先に。
とここでもトレーニングできる時間です!
①立っているとき
つり革は持っていてください(倒れると周りに迷惑がかかります)。
姿勢を正し、なるべくつり革に体重を預けずにキープします。超満員電車だと難しいですが、無理ない範囲でやってみましょう。
②運よく座れたとき
始発駅から乗るから座れる人、運よく目の前が相手座れた人にもぴったりのトレーニングがあります。
電車のシートに深く腰掛けます。背中はシートにつけずに座り、顎を引きます。
両ひざはつけるようにしておくのがさらに良いトレーニングになります。
この状態をキープ。スマホを見たり、台本を読むのもいいですが、姿勢キープでトレーニングもできるのです。
家事中のトレーニング
家事をやりながら、外郎売を練習するのもいいですよ。洗い物をしながら、食事を作りながら、掃除機をかけながら・・・。
特に掃除機をかけるときには、掃除機から大きな音が出ることが多いので、少々大きい声で練習しても問題ないですね。
紹介しましたように、私は「声優になりたい!練習だ!さあセリフを・・・」のようトレーニングはあまりしていませんでした。声優になるためのトレーニングは、声優志望者が思っているよりもかなり地味なことがわかっていただけたでしょうか。
もちろん、しっかり台本を解釈した上でのセリフの練習をプラスするのは問題ありません。自分なりにトレーニング方法をいろいろ試してみて、長く続けていけるトレーニングを見つけましょう。