ついこの前公開した記事では「学力」が声優に必要であることをご紹介しました。その中でも、学校の勉強で声優になるための学力をつけることが重要だともご紹介しています。
それでも
「数学って声優に関係なくない?」
「家庭科なんて別に声優の仕事では使わないしw」
と思った方もいると思います。
実際私も声優になりたいと思ったのが高校2年のとき。
進学校でしたが、「何のために勉強しているのか」はわからずにただ勉強していました。
「学校での勉強」が、声優になる勉強を始めてからも実際に声優になってからも役に立ったと思ったことはありませんでした。
でもこうやって文字を書いたり、知らずにそれなりの読解力が身についていたのは、学校での勉強をしていたからだと気づいたのです。
今回は、学校の勉強が声優にとって必要なのかどうかについてご紹介します。
もくじ
声優になるための7つのスキル
まずは、声優の仕事をする上で重要になるスキルを確認しましょう。よく声優は演技力が大事だと言われますが、その「演技力」は、これからご紹介する7つのスキルによっても向上していくものなのです。
【その1】台本を読むための「読解力」
他の記事でも何度か説明していますが、声優は台本を「読む」ことが仕事です。「読む」というのは声に出して「読む」ことだけではありません。
台本を読解し、解釈することも「読む」という表現になります。実は声優は台本を「解釈する」仕事の割合の方が多いとも言われています。その割合は8割以上!
長い文章を読める(解釈できる)「読解力」がついていないと、その後の「表現する」までに至らないのです。
【その2】演技をする「表現力」
「演技する」とは、嘘をつくわけでもなく、ただそのフリをするだけでもありません。その役の気持ちそのものになって演じます。
同じ役を別の人が演じて「こっちの声優さんの方がいいな」とか「この役はこの人でしょ?」とか思うのは、それぞれの演技における「表現」が違うから。
何もないただの台本に書かれた文字を「役」として作品の中に生きさせるために、声優はさまざまな表現をします。ありとあらゆる役を作品に生かす「表現力」が声優には必要です。
【その3】人との関わり「コミュ力」
声優になりたい人でありがちな勘違いですが、アニメのオタクやファンの延長で声優業界に入ると痛い目に遭います。オタクやファンの中には「コミュ力」が低い人も多くいます。
偏見もちょっとは入っていると思いますが、コミュ力が低いから2次元の世界が安心できるという人は一定数います。しかし、声優業界で声優を続けていくには人との関わりは避けられません。
事実私もコミュ力が低くて声優業界では苦しい思いもしました。声優事務所の社長やマネージャー、共演者、スタッフ、ディレクターなど、1つの作品を作る上での1部が「声優」なのです。さまざまな人たちと協力して良い作品を作ろうとする「コミュ力」も必要なのです。
【その4】すぐに変化できる「瞬発力」
私は不器用すぎて、また頑固な性格が邪魔して、なかなか相手の言っていることに対してすぐに反応できない欠点がありました。声優の仕事では、台本をもらったら、自分で「ある程度」まで役を作り上げて収録に臨みます。
その役を演じたものをディレクターに聞いてもらって「ちがう」と言われれば、その場で役の作りそのものを変更しなければならないこともあります。体の動作を瞬時に変えることができる力を「瞬発力」と言いますが、脳も同じように柔軟に変化できる「瞬発力」が必要なのです。
【その5】何が起きてもめげない「精神力」
声優の業界では、仕事で「褒められる」ことはまずありません。収録の現場は、その声優を褒めて伸ばしてくれる学校ではありません。収録に来る人間は、1つの作品を最高のものに仕上げるための「プロの集団」です。
ときには、厳しいディレクターさんもいます。怒号が飛び交う現場もあります。声優がそんなことにいちいち落ち込んでいるようでは仕事になりません。声優にはめげない「精神力」も必要なのです。
【その6】健康な体「体力」
アニメやナレーションの声優の仕事は朝10時から2、3時間収録をすることが多いです。昼からの収録ももちろんあります。しかし、長編映画の収録ともなると、長時間になることもあります。
長時間の収録でも集中力を切らさず、最後まで気を抜けないので「体力」も声優には必要です。
【その7】役を作り上げる「想像力」
台本をさらっと読むだけでプロの声優はある程度のイメージが浮かびます。アニメの場合は、絵が出来上がっていない状態で線画と呼ばれる状態の画面での収録になることもあります。
そのため、台本を読み、解釈し、登場する役のイメージを作れる「想像力」も必要になります。
声優になるための勉強とは?
学校の授業では国語や数学などいろんな授業がありますが、学校でも声優になるための勉強はできます。中学校の教科の9教科(今は他の教科もあると思いますが)で考えてみました。
【1】国語(現代文・漢字・文法)
なんといっても声優は台本を「読む」仕事です。国語の現代文を読み解くことで、読解力もつきます。また声優は台本を読むために、漢字がすらすら読めなければなりません。漢字の読みも大事な声優の勉強です。
また、読解力をつけるには、日本語の文法も大切です。国語の教科書のところどころにある文法の解説は退屈な内容ではありますが、文法がわかるのとわからないのでは雲泥の差があるのです。
【2】音楽(音感・リズム感)
声優はアクセントやイントネーション、プロミネンスなどを理解していることも重要です。日本語は音の高低で表されるため、音感がないとアクセントの違いが理解できず、修正することができません。正しい音を聞き分ける音感を鍛えるため、音楽の授業もバカにできませんよ。
音痴の人が声優にとって不利になるのはこの点です。また、日本語をセリフとし発するときにも、心地よいリズムというものもあります。ずば抜けていいレベルのリズム感は必要ないと思いますが、人が聞いて「心地いいか」を感じるリズム感は最低必要です。
【3】体育(体力・瞬発力)
先ほども紹介した通り、声優の仕事は集中力も必要です。体力もある人のほうが、風邪もひきにくく、長時間の仕事になってもいい演技ができますね。
またディレクターから指示があった場合には瞬時に自分の演技を組み換え、芝居を対応させていく「瞬発力」も必要です。運動が嫌いな人は、体育の授業で体を動かすことに慣れておくことも重要ですよ。
あらゆることを「勉強」する
声優に直接関わりないように思える教科も、間接的に関わってくることもあります。声優は、「人」を表現する仕事ですから、学校で勉強する教科でも無駄なものはありませんよ。
【1】数学は無意味じゃない
数学は一見声優には何の関係もないじゃないか!と思っている人は多いと思います。しかし、数学を勉強することで、「論理的思考」が鍛えられます。また、多角的にものごとを見る力やデータや根拠に基づく分析もできるようになります。台本に書かれている人物を分析することにも役に立つのです。
【2】英語はナレーションでも役立つ
日本語を仕事にする声優だから・・・と英語を放置するのは良くないですね。英語の勉強もやっておいて損はありません。吹き替えの仕事では、英語の映画の原音を聴きながら、アフレコをします。
英語の細かいニュアンスがわかる状態なら、吹き替え声優として表現出来る範囲も広くなります。また、最近では英語のナレーションもあるので、英語がわかるということも1つのスキルになっていくかもしれませんよ。
【3】家庭科は一人暮らしは必須
声優になるということに直接関わりがあるかは不明ですが、家庭科も大事です。声優になるために上京して一人暮らしをするケースもありますね。声優になるなら、お金の節約もしておく方がいいでしょう。
家庭科で教わることも、いざ一人暮らしで自炊をする場合には役に立ちますよ。
【4】理科は生きる方法
理科といっても物理や地学、生物、化学などに分かれていますが、一般常識として知っておく方がいい知識もあります。理科は人が生きていくための知恵だったり、やったら危険なことなどを学ぶ教科でもあります。
【5】社会は常識を知る
歴史や地理などの社会も一般常識として知っておく方がいいでしょう。台本が時代ものだったり、歴史上の人物を演じなければならないときに、人物像をイメージするのに役立ちます。
【6】美術は感性を磨く
美術もあまり声優には関係ないように思えます。絵を観賞して「どんな意図でこの絵を描いたのか」「この絵を描いたときどんな気持ちだったか」など絵を「解釈する」という点では台本の解釈をすることと似ています。
セリフで人を感動させる、描いたもので人を感動させる・・・
似て非なるものではありますが、共通点はありますね。
学校の勉強をしているときに、こんな勉強が一体何の役に立つのか?と疑問に思う人は多いですね。私も、学生のときには声優になるのに、学校の勉強なんて不要じゃないかと思っていた1人です。
それでも、実際に声優になってから思ったことがあります。人生の経験で無駄なことは一切ないということです。声優という仕事は「人間」を演じることが仕事です。
だとしたら、人間に関わる全てのものが声優にとっては重要なことです。
遊ぶときには思い切り遊ぶことも重要だし、勉強するときには精一杯勉強することも重要です。
何だかちょっと説教くさい内容になってしまいましたw
本気で声優になりたい人は、目の前にあることを必死にやるだけでも声優になるための勉強にもなってるってことです。