声優は「いい声」じゃなく「演技力」が必要!演技力をあげるには?
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アニメ映画や吹き替え映画の主人公を俳優さんが演じることがあります。
世間一般的に「やっぱり声優の演技の方が上手い」とか「俳優さん、声優としては下手じゃない?」とか言われることもしばしば・・・。

俳優としては演技力があると言われても、声優として演技力があるかは別だったりもします。
声優に大事な演技力とはどんなものなのか?
声優になりたい人が声優として必要な演技力をつけるにはどうすればいいのか見ていきましょう。

1)芝居での演技力って?

俳優と声優は同じ役者です。俳優にとっても演技力は大事ですが、声優の演技力とは少し違う点もありますよ。
まずは、声優が芝居をする上での演技力がどんなものか説明しますね。

【1】演技のベースは不可欠

俳優でも声優でも演技のベースは同じです。
演技する上でのベーススキルは不可欠なものです。

①滑舌

セリフが聞き取れないのは、声優では致命的なことです。声優は「声」を使って演技をしますが、声優が芝居をする時には「声」しか見ている人には聞こえませんから、滑舌が悪いということはセリフを正確に伝えることができないということです。

しかも滑舌よく喋るとなると、意識しすぎて演技が固くなってしまう人もいます。
見ている人がその役のキャラクターがどんなものなのかがはっきり伝わるためのベースの滑舌の良さが必要です。

②発声

声優は収録をするときにマイクを使っています。しかしこのマイクは音声を拡張する目的ではなく、あくまでも音を拾うためのマイクです。声優だからといってマイクを当てにした演技をしていると、「声が小さい」と言われてしまうことも少なくありません。

舞台の発声とは異なり、声優の発声は「マイクが拾いやすい」ように練習する必要があります。大きな声という芝居をするにしても、ただ大声を出せばいいわけでもありません。
よく響く通った声が必要なのです。

③読解力

声優の仕事はその役の感情を表現する仕事でもあります。しかし台本にはその役の感情はどこにも書かれていません。
セリフの中に「!!」とか「・・・・」などの記号で書かれたもの、ト書きに書いてある動作(例えば、「と椅子を蹴り倒す」など)から感情を推測して表現するのです。

最近では声真似が流行っているようですが、正直声真似は声優になるにあたり全く意味がありません。台本の読解をして、ゼロから役を作り上げていくスキルが必要なのです。

【2】演技のベースがあって表現につながる

ここまでにご紹介してきた声優のベーススキルだけでは声優になることはできません。ご紹介した声優のベーススキルはあくまでも「ベース」に過ぎません。

声優の仕事は、ベーススキルを道具として使い「表現する」ことです。
表現は個々が持っている声の高低や細い太いなど「元々持っているもの」を使って行います。

【3】演技力があるかは視聴者が感じること

ベーススキルを身につけて、表現することができるようになったとしても「演技力がある」
という評価になるかは分かりません。演技力があるかはあくまでも視聴者が感じることであって、声優本人が決めることではないのです。

自分本位の視聴者を無視した演技では受け入れられないでしょう。
だからといって媚びた演技をするのもNGです。
ベーススキルがあった上でその役に適切な、あるいは視聴者の期待を超えるような表現が出来た時、演技力があると視聴者が判断するのです。

【4】声にこだわらず「演技力」にこだわる

よく「声がかわいくない」「声がかっこよくない」「声が高くない・・・」などといつまでも声にこだわって演技している人がいます。
でも声優は役者ですから声質は全く関係ありません。

もちろんそのシーンにそぐわない声を使って演技した場合には批判されるでしょう。しかし自分の持っている声はもともと決まっているのです。

声を変えたわざとらしい演技は視聴者には受け入れられないのです。
もちろん声を少し高めの位置を使ったり、喉にわざと引っ掛けて出すような芝居をすることはあります。しかしあくまでも「視聴者が受け入れるかどうか」が最も重要なのです。

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2)声優の演技力を構成する要素

俳優も声優も役者です。人間を表現する仕事です。
しかし、根本的に俳優と声優の演技が違う点があります。

【1】俳優と声優の決定的な違い

俳優は体や表情が見えます。でも声優は声だけしか聴こえません。確かにアニメや吹き替えは、絵や演じた海外の俳優の姿は見えています。
でも、アニメの場合は絵の方が表情も細かくなく、デフォルメされた表情や動きをしますね。

吹き替えの場合にも俳優さんは海外の方ですから、文化や価値観の違いから表現方法も違っていることが多いです。

声優はその絵や俳優に「合わせて」表現するだけでは足りない、もしくはちぐはぐな演技になることもあるのです。

【2】アニメは分かりやすい感情表現を求められる

アニメの場合には、すべてのキャラクターの表情が薄いです。もちろん細かく作りこめばいいのですが、制作費の関係上難しいことが多いのです。

そのため、声優としては、アニメの絵以上にセリフだけで感情がわかるような表現が求められます。

【3】吹き替えは海外の俳優の演技を翻訳する

アニメと違い、吹き替えの場合には海外の俳優さんが「すでに演じたもの」を演じます。
英語を翻訳するのと同じように、演技を翻訳するということです。
日本人に伝わりやすいセリフに翻訳家が訳してくださった台本を使います。

吹き替えは、海外の俳優さんが表現した役をそのまま演じるのではなく、日本人に伝わる表現を選んで使うことが求められます。

また、コミカルな映画などの場合には、アニメの声優のようなデフォルメされた演技をすることもあります。

3)声優としての演技力の要素

アニメでも吹き替えでもそうですが、声優は「声」という道具しか持たずに演技をします。
俳優の場合には100%を姿や表情、声、セリフで表現するとすると、声優は「声だけ」で100%の演技をするということです。

100%の演技を「声」だけでするとなると、セリフの言い方だけで演技力が決まるということですね。

【1】セリフの抑揚

日本語というのは、さまざまな要素で言葉を伝えます。
言葉の伝え方の1つとして「抑揚」があげられます。音でいうと「声の高低」でもありますね。
セリフにおいても抑揚のない芝居は「棒読み」と言われます。
その役の気持ちに合った、自然な抑揚が必要です。

【2】セリフの間の使い方

日本語だけではありませんが、間の使い方でも伝わる内容が変わります。
強調したいセリフの前に少し間を入れるとか沈黙「・・・」という間もあります。
聴いている人は「間」のときにいろいろなことを考えますね。
考えさせることで、その後のセリフで視聴者の感情を動かすこともできるのです。

【3】セリフの緩急・スピード

日常会話をイメージすると分かりやすいですが、セリフの緩急やスピードも大切なセリフのポイントです。日常会話では無意識に緩急をつけ、スピードを変化させて会話をしています。

その役の性格や状況を理解してもらうために、緩急やスピードは必要です。
反対にストレートナレーションでは、一定のスピードであることを求められることもありますよ。

【4】セリフの距離感

俳優と大きく違う点がセリフの距離感です。俳優は姿が見えており、視聴者から見たときに距離はビジュアルの情報として入ります。
ほとんどの場合、実際の距離での演技をするため、距離感の考えはあまり必要がないのです。

でも声優は絵の中での状態に「合わせた」距離感が必要です。
すぐ隣にいるのか、10m先に相手がいるのかでセリフの距離感がまったく違うのです。

俳優が声優の仕事をした時になんとなく下手に聴こえてしまうのも絵の中での距離感がつかめていないのが原因です。また、多くの声優養成所生がこの距離感がつかめないために、リアリティのないセリフになってしまうのです。

4)声優になりたい人の演技力のお悩み

声優としてのセリフは特に、いままでに紹介したポイントでつまずく人が多いです。
また、舞台や顔出しでの俳優の仕事でも、声優との違いで悩む人が多い印象です。

【1】棒読みになる・抑揚がない

棒読みだと言われることは、役者としてはかなり落ち込みますね。棒読みということは、言い換えると抑揚がないということです。

台本の文字だけを追ってしまい「ただ読んでいる」のでは演技とは言えません。
学校の国語の教科書を音読するのと同じになってしまいます。

感情表現にいたるまでの台本解釈ができていない、そのセリフを発するだけの感情になっていないなどが抑揚がないセリフになる原因です。

【2】しゃべりに癖がある

しゃべり方、口調には人間の性格やそのときの状況における感情などが出ます。
例えば、おっとりした性格ならば、日常会話のセリフでも比較的ゆっくりしゃべります。急いでいる場合には、早口で聞き取るのがやっとの会話になりますね。もちろん癖のある役で、そいういう役だと知らしめるためにはしゃべり方に癖を持たせることは必要であることもあります。

ただ、その役のしゃべり方ではなく、演じている人のしゃべりの癖が出ることがあります。
これは、演じる側で「こう見られたい」という願望が出ていることが原因だと思われます。
また、好きな声優さんの癖をまねているうちに、どの役でも癖がついたしゃべり方で演じてしまうということもあります。

でも声優としては、声優本人のしゃべり方ではなく、役のしゃべり方でなくてはなりません。一度ついた癖はなかなかとれないので、普段の生活からしゃべり方を意識して直すようにしましょう。

【3】距離感がつかめていない

これは私もずっと悩んだことですし、今でも上手く距離感をつかめず失敗することも多いです。声優としては、スタジオで絵を見ながら、マイクに向かって話しかけるという物理的距離があります。

絵の中での距離感がちぐはぐのままだと、視聴者は違和感をおぼえます。
例えば、10mくらい距離が離れているのに、隣の人に話すようにセリフを発するのはおかしなことでしょう。
声優としては、絵の中の距離感をイメージし、適切な距離感での演技が必要なのです。
こればかりは、何度も練習して距離感の違いをつかむ必要がありますね。

【4】行間が読めない

行間というのは、文章の行と行の間の何も書かれていないところです。

台本の中には、「・・・・」だとか「!!!」のような記号で書かれたものが存在します。これはアドリブで少しセリフを入れることもありますし、声ではない「息」などでも表現されます。
またト書きが進行しているとしてもその役の気持ちがストップしているわけではありません

行間の進行中でも役の気持ちがスムーズに、ときにグリップを効かせるように「変化」していることが多いのです。
行間を読むことができないというのは、セリフがあるときにしか感情が流れていない演技をしているということなのです。

5)演技力の源は感情にあり

声優養成所などでは、先ほど紹介したようなダメ出しをもらう人が多いのではないでしょうか。声優として仕事で必要なスキルとも言い換えることができるものではありますが、実はすべての原因は「役の感情になっていないこと」です。

つまり作品やシーンに適切な役の感情になりさえすれば、ほぼ上手くいくということです。最後に、声優としての演技力をつけるにはどうすればいいのかを具体的に説明します。

【1】ベースを作る

滑舌が苦手、声が小さいなどは声優としては論外です。例えばその役の感情としては、早口でまくしたてることが必要なのに、滑舌が悪くて、何を言っているのかわからないとなれば、視聴者に役の感情を伝えるのは難しいでしょう。小さな声で怒鳴ることはできませんよね。

滑舌が苦手とか声が小さいなどは、演者の都合であって、役の都合ではありません。演じる側のベースを作ることがまずは必要なのです。

【2】本を読む

声真似だけをしている人は声優には程遠い場所にいますと他の記事でもお伝えしました。声優はすでにある絵に声を当てることが主な仕事ではありません。
台本から読み取れる役の性格や感情を表現し、その作品の中での役割を伝える必要があります。台本は基本文字のみで書かれていますから、文字情報からしか役をつかむ材料を得られないのです。

文字情報しかない本を読むことでしかこの訓練はできません。漫画ではダメです。演技力の基礎になる読解力をつけるため、本を読む習慣をつけましょう。

【3】作品を見る

すべての事柄において、自分の常識が他人の常識であるわけではありません。役を演じるのは自分ですが、役そのものは他人です。

他人がどんな感情表現をするのかを研究するのには、アニメだけではなく、映画、舞台、絵画やダンスなどありとあらゆる作品を見ておくことをおすすめします。

すべての作品に作者がいます。その作者の意図がその作品に表現されています。
台本の読解力でも、作品を見ることは非常に役に立ちます。

ここまでの演技力を鍛える方法は、ベースに近いスキルでもあります。声優養成所に入る前にできるだけ習慣化しておくとよいですね。

【4】日常の感情を覚えておく

何度も言うように声優は役者です。声優は人間を演じます。
普段の生活の中でも演技力を上げるために研究できる材料は沢山あります。

その1つが日常生活の感情を覚えておくことです。例えばとてつもなく怒り狂った経験があれば、声優として怒り狂う役を演じる時に役に立ちます。

人間がどんな時に、その感情になるのかを自分の中にストックしておくということなのです。日常から自分の感情を覚えておくことによって、その時にどんな行動をとったのか、どんな声でどういう言い方をしていたのかが演技の中でも使えるということです。

【5】人間観察する

人間観察をすることも演技に使える引き出しを増やすことにつながります。人間それぞれに個性があり価値観も違います。

おこりっぽい性格の人はどんな行動を取るのか、どんな言葉でどんな風に言うのか、のんびりした性格の人がどんな行動で、どんな言葉をどんな風に言うのかなど、人間観察でストックを増やしていくのです。

違う価値観で物を見ている他人を観察して、自分の演技の引き出しを増やしていくということです。

【6】台本を丁寧に解釈する

ここからは、声優としての演技をする際に必要な準備だったり、実践での心持ちも影響します。

台本は声優の演技力をつくるすべてが詰まったものです。
台本1つの解釈次第で演技力をあげることが可能です。

「あ! ちょっと、あっちに行こう・・・」

というセリフの場合を考えてみます。
最初の「あ!」では、何かに気が付いたことを表現することが適切ですね。会いたくない人を見つけた「あ!」かもしれませんし、まずいことを思い出した「あ!」かもしれません。

その前の状況で「あ!」の解釈の正解は違ってきます。
その後「ちょっと、あっちに行こう・・・」では今一緒にいる人にセリフをかけています。
周りの状況が図書館だったりすれば、ひそひそ声になりますね。

このように1つのセリフでも、細かく細かく分けて丁寧に感情を読み解いていく必要があります。
おおざっぱにだけ解釈して変化なくこのセリフを発すると「抑揚がない」と言われてしまうでしょう。台本を解釈するのは、おおざっぱにしてはいけません。
細かく丁寧に解釈する必要があります。

【7】無限の表現方法を考える

台本をすべて解釈し終わったら、今度は「表現」の段階にうつります。台本の解釈としては正解は1つですが、表現は無限にあります

先ほどの「あ!ちょっと、あっちに行こう・・・」の場合、最初の「あ!」を周りが振り返るくらいに大きく出すこともできます。図書館だと少し声を小さめでもいいでしょう。

気づいたときの「あ!」を表現する方法はいくつもあるということなのです。もちろんその場の状況に合うようにすることも1つの表現ですし、大声で目立つように表現するほうが効果的なこともあります。

表現は無限にありますから、1つだけの表現に固執せずに、さまざまな表現を模索してみましょう。

【8】録音する

実際に表現を試す時には、必ず録音するようにします。自分では笑っている演技をしているつもりでも、客観的に聞いてみるとまだまだ足りないとダメ出しを受けることはよくあることです。

自分が演技している時には、客観的に見るということは出来ません。録音して後で聴いてみて、客観的に評価することができるのです。

録音して聴くのは、特に新人のうちは何日か経ってからの方がいいと言われています。それは、録音した直後はどうしても主観的になりがちだからです。少し時間が経ってからの方が客観的な自分の演技の評価ができるようになるのです。

私もまだまだ演技力があるとは自分では思っていません。
きっとベテラン声優でもそのようには自分を評価しているわけでもないでしょう。
声優になるということは、役者になるということです。

距離感などの技法は違っても、根本的な感情から発される演技には変わりはないのです。
演技力をつけたいのであればベーススキルを身につける練習を継続しつつ、たくさんの経験をするべきだと私は思っています。

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