突然ですが、どうやら私は発達障害だったようです。
昔から、周りにも家族にもちょっと変わった人とよく言われていました。
「口から先に生まれてきた」
「忘れ物が多すぎる」
「人の気持ちを考えて発言しなさい」
「話が長くて何を言いたいのかさっぱり分からない」
こんなことをずっと言われ続けてきたわけですが、
「発達障害」という言葉すらも当時は知らなかったのです。
ここ数年「大人の発達障害」もう世間では知られるようになって、もしかしたら私は発達障害なんじゃないか?とインターネットのチェックテストをやってみたりしていました。
声優になりたいという方からも、
「私は発達障害ですが声優になれますか」
という質問もときどき受けています。
今回、大人の発達障害の専門の病院で診察を受け、知能テストを受けました。
その結果、どうやら私は発達障害であったとのこと。
発達障害でも声優になれた私が、発達障害の傾向がある声優志望者の方に、
声優になるヒントをお伝えしたいと思います。
もくじ
1)発達障害の種類と声優のスキル
「発達障害」と言っても、発達障害の種類はいろいろです。発達障害は、主に3つの種類に分けられます。ここでは発達障害の種類を簡単に説明しておきます。
ただし私は、医師ではありませんので、専門的なことはわかりません。発達障害についてもっと詳しく知りたい方は他のサイトを確認したり、病院に行って診断を受けたりする方が確実です。
発達障害は、脳の癖のようなものです。脳が癖を持っていることで、得意なことと不得意なことで偏りがあるのです。大人になっても、脳の癖が多少はなくなっている人もいますし、重度の発達障害の場合には、そのまま社会に出て人間関係が上手くいかず、うつ病にまでなってしまう人もいます。
【1】ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDは特に最近よく知られるようになってきた発達障害の1つです。
子どものころから落ち着きがない、忘れ物が多いなどで「おっちょこちょい」とか「ドジな子」などの言葉をよく言われます。
①ADHDの特徴
- 細かい注意を払うことができない
- 集中力が続かない
- 忘れる・抜け漏れることがある
- 順序立てて課題を進めることが難しい
- 落ち着きがない
などの困りごとが起きます。男性と女性、個々でも違いがあります。一般的には、男性は落ち着きがないという「行動面」に出現します。女性には、頭の中が落ち着かないということから「おしゃべり」な人が多いと言われています。
②ADHDと声優スキル
集中力が続かなかったり、落ち着きがないといった特性を持っているADHDは、声優業界では長時間の収録に耐えられない可能性があります。遅刻がちでルーズな性格だと周りに思われているため、声優としての仕事をしっかりとできるのかどうかの信頼も得られづらいところがあるでしょう。
早い段階で自分のADHDの度合いを知り、改善するための対策を立てることが可能であれば、声優になれる可能性は十分にあります。
【2】ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)
ASDは主に人間関係が困りごとになる発達障害です。興味が自分だけに向いていることが多く、自分の話ばかりしてしまうことが多い発達障害です。筋道を立てて話すことが難しいため、人間関係にも亀裂が生じやすいのも特徴です。
①ASDの特徴
- 協調性がない
- 会話がかみ合わない
- 伝えたいことをまとめて言葉にすることが苦手
- 人の話に興味がわかない
- 自己流で勝手にものごとを進めてしまう
などです。人間関係でトラブルが絶えず、学生のときにはクラスでも浮きがちです。そのため、仲間外れにされてしまうことも少なくありません。
ASDも男性と女性では傾向が異なります。男性は、いわゆるオタクと呼ばれるような狭い範囲でのものごとにこだわる人が多いと言われています。女性では共感力がなく一方的におしゃべりをしてしまい、学校や職場などで浮いてしまう人が多いようです。
②ASDと声優スキル
声優業界では、コミュニケーション能力がかなり大事です。作品を一人で作るわけではないので、共演者やスタッフさんとの人間関係がうまくいかない可能性があります。
こだわりが強すぎて、ダメ出しを受けても素直に修正することができない傾向があるASDの人は、声優特有の「その場での対応力」が求められる場合にパニックになってしまうこともしばしばあります。
ただしADHDと同様、自分の特性を早い段階で知り、 意識しながら人と接することで声優として活躍することもできる可能性はあります。
【3】SLD(限局性学習症)
もともとLD(学習障害)と呼ばれていた発達障害の1つです。「読む」「書く」「計算」など特定の課題の学習が難しい発達障害です。全体的な理解力はありますから知的障害とも異なります。文字を読む力、文字を書く力、計算する力の凹凸があり、そのバランスがとれていないため、困難が生じます。
①SLDの特徴
- 読むこと「だけ」が苦手
- 書くこと「だけ」が苦手
- 計算すること「だけ」が苦手
など、知的発達の程度に比べて特定の行動がすごく苦手です。SLDは他の発達障害に比べると、学校の成績が1教科だけ悪かったり、全部悪かったりして、幼少期に発見されることも多いようです。
文字を読むことが苦手なSLDの人は、黒板に板書された文字を読むことができず勉強についていけなくなってしまう人もいます。計算が苦手なSLDの人は、数学の成績だけが異常に悪かったりと、アンバランスさが目立ちます。
②SLDと声優スキル
声優として仕事をするときには必ず台本を使います。文字を読むことが苦手なSLDの人は、瞬発力を必要とする声優の仕事はかなり困難である可能性が高いです。計算が苦手なSLDの人は、声優になるのにはそこまでの差し支えはないと考えられます。
文字を読むのが苦手なSLDの人は、音声読み上げなどで自分で対応できる方法を考えておく必要があると思います。
2)私は声優になれたけど発達障害だった!
私は学生の頃から「空気が読めない」とか「人の話を聞いてない」とかよく言われていました。
でも、本を読むことは好きで、100冊以上もある長編の小説を今でも読み続けています。
ただの性格だと思っていましたし、周りも努力が足りない、人の気持ちを考えなさいと言われ続けて、どうしていいやらわからなくなったことも・・・。
でも声優になりたいと考えたときに、勉強だけは得意だったので、自分が発達障害だとは気づかず、上京して声優養成所に通い始めたのです。
【1】発達障害の検査を受けました
ごく最近、発達障害の知能検査を受けてきました。現在では発達障害に関するブログや動画などもたくさん見ることができます。夫から私が発達障害ではないかと指摘もされたので、早速実家から通知書を取り寄せ、予約をして大人の発達障害を診てもらえる病院に行きました。
発達障害の診断は、医師による診察と、WAIS-IIIという知能検査を行っているところが多いようです。 私も診てもらっている病院がWAIS-IIIの検査を行なっていました。初回の診察は、全部が終わるまで約4時間ほど。
知能検査は、2時間半くらいあって、算数のような問題やパズルを解いたり、言葉の意味を聞かれたりと、結構疲れました。
【2】ADHD&ASD傾向あり・・・
1ヶ月後に病院に行ってみると、先生から発達障害の傾向があると言われました。
「幼少期は完全にADHD、思春期以降はASDの傾向が強くなっているね」
衝撃でした。
うすうす自覚はあっても、面と向かって言われると人間ってショックを受けるものですね。
ADHDだと思っていたのが、どちらかと言うとASD傾向が強いのだそうです。
帰宅時の私は、知能検査の結果を何度も何度も見直し、すぐさま女性のASDについて調べ始めました。この行動自体も、ASDの特性だったりもするので面白いものです。
【3】発達障害だけど声優になれたのは?
結果として私は発達障害でした。でも私は声優になれました。
ASD傾向の強い発達障害がある人は、人の気持ちがわからない、共感力が弱い、想像力が弱いなどと言われます。
私自身も日常生活で夫の気持ちがわからなくて、口喧嘩をすることも多くありました。
声優としてお芝居をしているときも、言われたことがすぐに分からない、アドリブに弱いとずっと言われ続けていました。
発達障害だけど声優になれたのはなぜ?
色々と考えていくうちに、簡単に言えば、日常的にやってきた努力が実を結んだのかなと結論付けました。
【4】声優になれる発達障害の種類や程度
今発達障害だと悩んでいるけれども声優になりたい人はきっとたくさんいるんだと思います。
発達障害にも色々あってADHD傾向が強い人、ASD傾向が強い人、SLD傾向が強い人など本当にさまざまです。
発達障害は、ひとくくりにするのは難しいと思うのです。同じ発達障害の中でも種類や程度も個々に違います。知的障害を伴う人もいます。
私は、自分の発達障害のことを知れば知るほど、声優になりたい人に、安易に発達障害でも声優になれるとは言い切れません。でも実際今声優として活躍している人であっても、発達障害である人も少なくないとも思うのです。
声優業界は平等です。
「声優として求められた仕事ができるかどうか」
この一点のみクリアできれば、声優として仕事はできます。
この後ご紹介する私がやってきたことが、声優になるためのヒントになれば良いと考えています。
3)発達障害でも声優になるためのヒント
私は声優になった後に自分が発達障害だと知りました。すでに発達障害だと診断されている人でも、グレーゾーンの人でも、 定型発達だとしても、声優になれる人もいればなれない人もいます。
声優になれる人となれなかった人の違いは、
自分の特性について、性格について、どれくらい知っているのか?
声優になるために自分にできることは?できないことは?
できるようにするためにどうすればいいのか?
などを考え、実行してきた人だと思います。
最後に私が長年やってきたこと、心がけてきたことをご紹介します。発達障害の人の視点から書いたものですが、定型発達だとしてもやるべきことは同じです。
【1】なるべく早く自分の特性を知る
声優養成所の入所オーディションや声優事務所の審査では、自分の武器が何なのかをしっかりと把握しておくことが重要です。これは声優業界に限らず、就職する時にも必要なことです。
なるべく早く自分の特性を知り、マイナスのことであればカバーできるように、プラスのことであれば武器として対応できるように訓練していくのです。
自己PRをする機会は、声優になるならば何度もあります。まずは自分の特性を早く知っておきましょう。
【2】本を読んで読解力をつける
本を読んで読解力をつけることがいいというのは、発達障害の人に限ったことではありません。
声優は台本を読んで、文字情報から役を組み立てていきます。
私は、学生の頃は運動はまるっきりできませんでしたので、せめて勉強だけはできるようにしたいと考えていました。国語の成績はものすごくいいわけではありませんでしたが、本を読むことは昔から人よりも多くやってきたと思います。
共感力が弱いと言われるASD傾向が強い私ですが、本の世界だけは登場人物に共感して涙を流すことも多かったです。文字だけの本をたくさん読んだことで、想像力も豊か・・・とはいかないまでも、人並みに鍛えられたのかなと思っています。
【3】他人に興味を持てなくても研究する
声優になりたい人は、自分だけではなく他人にも目を向けることも大切です。私もまだなかなかうまくいきません。でも、他人に興味をもてなかったとしても、他人を研究することは続けています。
発達障害だとすでにわかっている人は、自分が周りと少し違うことは理解しているのではないでしょうか。 発達障害だと診断されていなかったとしても、他人と自分の違いに注目してみてください。
声優は他人を演じるものです。自分がそう思っていなくても、その気持ちをセリフにして発します。
たとえ他人に興味がもてなかったとしても、研究してみることはやってみてもいいと思います。
【4】日常から「普通」を真似する
俳優の栗原類さんがASDだということを公表していますね。
栗原類さんのとあるコラムを読んだことがあります。
栗原類さんは、周りの役者さんたちを見て
「普通の人は怒っている時にこんな動作をする」
「普通の人は嬉しい時にこんな言葉をこんな風に発する」
と常に「普通」を真似しているのだそうです。
落語などの芸事と同じで、声優は上下関係が厳しいことでも有名です。でもそれは、先輩から芝居を教わる立場だからだと私は教わりました。
声優になりたい人は、実際の声優さんにお会いすることもあります。そんな時に先輩声優さんがどんな考えでお芝居をやっているのか、どんなふうに芝居を組み立てていくのかを聞いてみるのもいいと思います。
そして聞いたことを「すぐに」実行する。
この瞬発的な行動力は発達障害の人は難なくクリアできるのではないでしょうか。
ここまでご紹介した発達障害で声優になりたい人へのヒントは、あくまでも私が心がけてきたものです。発達障害の種類や程度によっては、まったく当てはまらないこともあると思います。
発達障害であっても定型発達であっても、人それぞれ持っている悩みや価値観は違います。
私は発達障害だと知らずに、声優になりたい一心で突き進んできました。人と違って、器用にできないこともたくさんあります。人を傷つけてしまう言葉を平気でいってしまうことも・・・。
それでも、声優になるための情熱は人一倍あって、
そのためにどうすればいいのかをひたすら考えて、行動することができた。
そのことだけは私の自信です。
今人間関係がうまくいかないとか、自分がコミュ障だとか、国語が苦手とか、滑舌が悪いとか、声優になりたいのに、苦手とすることが多くある人はものすごく不安だと思います。
でも、何もしないうちから不安に押しつぶされてしまうのもったいないです。
発達障害だろうが、定型発達だろうが声優になれる人はなれます。
不安でも、悩んでいても前に進んだ人だけが声優になれます。
本気で声優になるんだと思って行動を始めた人だけが、声優になれるんです。