声優はスタジオで収録をすることが仕事です。スタジオでの収録にはかなり高精度のマイクを使います。スタジオに設置してあるマイクの金額は安いものでも20万円、高いものだと200万円を超えるものもあるそうです。
今回は声優が仕事をする時の「ノイズ」について、どんなものがあるのかと対策をご紹介していきます。
もくじ
声優のスタジオでのノイズとは?
声優が使っているスタジオのマイクは、最初にご紹介したとおり高精度なものです。小さい音を立てただけでも、拾ってしまいます。ノイズがひどすぎて、声優が収録してもNGとなる場合もあるので、プロの声優はノイズを立てないように非常に気を使っています。
セリフとセリフの間に入っているペーパーノイズであれば、 ミキサーさんがノイズを削除してくれることもあります。しかしこの作業は非常に時間がかかるもので、なるべくノイズを立てないことも良い声優の条件であることも・・・。
【1】ぺーバーノイズ
声優は台本を片手に収録を行いますが、その台本自体がノイズとなってマイクに入ってしまうことがあります。
- ページをめくる音
- 手やマイクスタンドに触れる音
などがペーパーノイズと呼ばれます。
【2】口やお腹からのノイズ
声優がセリフを喋る時に入ってしまうノイズもあります。
①リップノイズ
ナ行、マ行、パ行は特にリップノイズが出やすい行です。リップノイズとは、声優が喋る時に、口から出てくるノイズです。「クチャ」とか「p」という音がマイクに入ることを言います。
またハ行がさ最初の言葉の場合に、出す息の量が多すぎるときやマイクに近いときに、息の音が入ってしまうのもノイズです。
これを業界用語で「マイクを吹く」と言います。
②お腹の音
声優の仕事は長時間に及ぶこともあります。お腹が空いた時に、「グー」という音がノイズとして入ってしまうこともあります。
【3】動作によるノイズ
声優のスタジオでの収録の時には、アニメや吹き替えの場合、3本くらいのマイクを共演者が交代で使います。出番がない時には、マイクの反対側にある椅子に座って待機します。そのため、声優の動作が雑だとノイズが入ってしまいます。足音や服が擦れる音(衣擦れ)などがそうです。
ペーパーノイズを立てない方法
ではペーパーノイズを立てない方法を紹介していきます。声優養成所や声優の専門学校ではマイクを使ったアフレコ実習の時に教わる内容でもあります。
【1】台本はどちらの手でも持てるようにする
多くの人が台本を持ちやすい手に持っていると、交代でマイクに入ろうとした時に、台本同士がぶつかってしまうことがあります。例えば、今マイクに入っている人が右手に台本を持っているとして、次にマイクに入ってくる人が台本を左手に持っていると、台本同士が触れてしまうのです。
先にマイクに入っている人が、右手で台本持っているのなら、自分がマイクに入る時も右手で台本を持つようにします。つまり、台本はどちらの手でも持てるようにしておくと良いということになります。
【2】ページをまたぐセリフを前のページに書く
台本の1ページに書くことができるセリフの文字数は決まっています。声優のために、読みやすいようにしてくれるなんてことはまずありません。ページをまたぐセリフがある場合には、次のページに書いてあるセリフを前のページに自分で書き込んでおきます。そうすれば、ページをめくる必要もなくなります。
【3】セリフを覚えるレベルまで練習する
スタジオで収録するということになるとどうしても緊張してしまうものです。通常は収録2日前くらいには台本をもらえることが多いです。自宅に持ち帰って、台本を読んで練習する時間がある場合には、セリフを覚えるくらいのレベルで練習してみましょう。
緊張がしにくい状態なら、台本をめくる手が震えることも可能性が低くなります。これもペーパーノイズを減らす方法のひとつです。
【4】めくりにくいところはクリップをつける
台本は当然ながら紙で渡されます。印刷したものなので、ページとページがくっついてめくりにくい場合もあります。自宅で練習した時に台本がめくりにくいなと感じた場合には、事務用クリップをつけておくだけでもかなりめくりやすくなりますよ。
口やお腹からのノイズを立てない方法
声優自身が発するノイズは多くが口から出てくるものです。
【1】リップノイズ
緊張して口が乾いてくると、口を開くときにリップノイズが出やすくなります。対策としては以下のようなものがありますよ。
①常温の水
プロの声優はほとんどの場合、常温の水を飲みます。緊張すると口が乾いてくるので、それを潤すためのものです。甘いジュースだと砂糖が入っているので、余計に喉が乾きますし、口の中がネバネバしてしまいます。またお茶だと、喉の油を必要以上に流してしまうため、喉が枯れてしまう可能性もあります。
そういったことを避けるためにプロの声優は、収録の時には常温の水を飲む人が多いのです。
②リップクリーム
緊張で唇が乾いてくると、口を開けるときにリップノイズが出やすくなります。リップクリームで唇を潤すことで、リップノイズを出にくくすることができるのです。
【2】お腹の音
声優の仕事は長時間になってしまうこともあります。声優も人間なので、お腹が空いて「グー」というお腹の音が鳴ってしまうこともあります。それを防ぐための方法を見ていきましょう。
①食事の時間を考える
収録の時間に合わせて、食事の時間も考えましょう。ただし、収録の直前に食事を満腹までしてしまうと、声が出にくくなる場合があります。食事の時間をずらすなどして、お腹の音が鳴らないように調整しましょう。
②チョコレートなどを持っていく
食事の時間をずらして、 収録の時にお腹の音が鳴らないようにしていたとしても、長い時間の収録であればお腹が空くこともあります。お腹が鳴るのを防ぐために、チョコレートなどのちょっとしたお菓子を持って行って食べている声優もいるんですよ。
【3】緊張しないように練習をする
お腹が鳴るというのは、お腹が空いている時の他に、大腸から発声したガスが原因であることもあります。緊張からくるストレスでお腹がなってしまう可能性があるということです。
緊張を避けるために、しっかり練習して収録に望むのが得策です。
動作のノイズを立てない方法
服が擦れる音(衣擦れ)やマイクまで移動するときの足音は比較的簡単に対策ができます。
【1】着ていく服を考える
シャカシャカいうようなナイロンの服を着るのはNGです。どんなに気をつけていても、ナイロンの服では音を立てないことは不可能に近いです。収録に行くときは、着ていく服の素材も考えておくといいですね。
またひらひらしたレースや装飾がたくさんついている服は、邪魔になることもあります。 スタジオは声優の仕事場ですから、着ていく服のデザインも考えていきましょうね。
【2】靴は履き慣れたものを
靴は履き慣れたものにしましょう。ぶかぶかの靴だと脱げてしまうかもしれません。
女性の場合、ヒールが高いものだと特に音が出やすくなります。スタジオの床は、敷き詰められたカーペットのようになっています。それでも雑な歩き方をしてしまえば、足音がマイクに入ってしまうのです。身長が低い場合にはヒールを履くこともありますが、ピンヒールではなく底の面積がある程度ある靴にしましょう。
控え用の椅子に座る時もそっと座るようにしますよ。
【3】とにかく練習する
緊張した状態では、スタジオでも普段しないような失敗をしてしまうこともあります。声優はマイクの前で演技をするのがメインの仕事ではあります。しかしそれ以外にもどのマイクに入るのか、出番はこの後なのかなどなど、芝居と関係ないところで考えることも多いのです。
台本をもらったらとにかく練習をすることで、緊張しづらくなりますね。また、スタジオで冷静に行動することができるようになります。
声優がノイズを立てないようにするために、工夫していることはたくさんありましたね。どの方法にも「練習する」ことをあげています。それは私の経験から感じたことです。スタジオでの収録は非常に緊張するもので、頭の中が一杯になってしまうのです。
練習を繰り返していることで、頭で考えなくても良い部分が増え余裕ができることにつながります。そうすることでノイズを減らすための気配りができるようになるのです。